No.97
正式名称
『医療の質安全保証を実現する
患者状態適応型パス
事例集2007年度版』
(標準診療計画の電子コンテンツ化)
(上記リンクは、2006年度版です。
ご注意ください)
患者の状態にあわせて、パスを組み合わせて使おう、
電子カルテでその真価が発揮できる、という主旨です(だと思います)。
患者状態と医療行為を、良く起こる「ユニット=固まり」として捉え、
・Aユニットでa状態になったら、Bユニットへ進む。
・Bユニットでb状態に 〃 C 〃 〃 。…と続きます。
・Bユニットでb状態が達成できなければ、Bユニットを繰り返す。
またはXユニットへ進む(もしくはバリアンスとなる?)
事例集が載ってますので参照いただけるとすぐわかると思います。
ワタシは、外科手術のパスよりは、やはり脳卒中系に惹かれましたが‥
「この形式では、いわゆる"パス"の意味があるのか」
という問いも聞いたことがありますが、
今までのパスの概念からすると、これはパスではないと
感じる人も多いのでしょう。
わたしとしては、今後、概念の転換を図る必要があると思います。
だって、従来の(一枚型の)パスでは
多くの患者さんに適応できない、またはバリアンスが発生しますから。
「パスの歴史」という視点で考えると、大きな岐路だと思います。
で、この本を読んで思い出したこと(やり残していたこと)ですが、
以前から、「誤嚥性肺炎のパスを作ってはどうか」と言われていたこと。
発症時~転機まで、いろいろなパターンがあるため
作れないなあと思っていました。
たとえばご本人の状態の差異としてあげられるのは
・入院元 (自宅・施設 / 院内発生)
・全身状態 (炎症反応は軽度 / 重篤な肺炎;呼吸器管理、気管切開等)
・摂食・嚥下(最終的に経口摂取が可能 / 一部可能 / 経口摂取は不可能)
(経口摂取までの期間も数日~数カ月まで個人差あり)
・転 機 (治癒・軽快 / 死亡)
もっとあるんですが、とりあえずこれだけ挙げておきます。
これだけのばらつきがあると、
従来型の(一つの)パスではカバーできないと考えていました。
で、そのときの苦肉の策は
「ST介入するためのパスを作ろう」でした。
誤嚥性肺炎の罹患後にも、ST処方がでないことも多かったので‥
肺炎を未然に防げなかった場合、せめて
肺炎罹患後には必ずSTが入れるようにしよう、という主旨です。
(ただしこれも、実現のためには
医師・看護師用の誤嚥性肺炎パスが運用されていることが必要条件かな‥
あとは意識障害・胃液吸引・嘔吐後の誤嚥性肺炎にもSTが介入するのか、
などが問題にあげられました。
ま、このへんは解決可能ですが。)
ということをつらつらと思い出したのは、
本の中に「脳卒中パス」があったから。
高次脳機能や摂食・嚥下の分野は、やはり細かく規定されてはいませんが、
これを応用すれば、ST分野独自のパスができるなあと思ったからです。
脳卒中も原因や発症時の状態~転機まで、
実にさまざまな状態がありえますから。
誤嚥性肺炎とSTをからめたパスであれば、たとえば
・ST介入の判断(全身状態と医師オーダー)
・訓練の種類 (間接訓練・直接訓練)
・段階的摂食訓練(直接訓練の延長線上)
・チームアプローチ(関連職種との調整)
・全身状態悪化時(ST休止、または訓練内容の変更;口腔ケア等)
・退院準備 (家族・関係者指導)
こうやって挙げてみると、本来のパスとは違い、
検査値など客観的な指標は使えない可能性が高いな‥
あと、これ、順番通りに進むとは限りませんねー。
介入開始と同時に、退院準備が始まることもあるし。
そうそう、
この本でもこの点に触れてます。
複数のユニットが「発動」(この言い方、好きです)するとき、
その関係をどうするか、と。
相乗効果、または抑制効果をどう規定するか?
う~ん、ムツカシイ‥
たしかに従来のパスにはない概念ですが‥
結局、臨床の「カン」に戻ってしまいそうになりますが
それで終わりたくないしな~。
(しかし臨床の "カン" が働かない現場も楽しくなさそうだ、
という気持ちもあります;笑)
と、ぜひやってみたい仕事です。
臨床を離れた今になって、こんな面白そうなことが見つかるとは。
しかし、時間があったからこそ
本を読むことができたわけで‥ ジレンマですなー。
臨床の記憶があるうちに、「誤嚥性肺炎のユニット」考えてみます。
いつか、使えるかもしれないしね!
いつにもなく長い記事になりましたが
お目通しいただきありがとうございました
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